04.クールビューティーお姉さま
「みょうじナマエです、今日からよろしくお願いします!」
騒がしいお昼ご飯を済ませ、なんとか寮の集合時間に間に合った私達は、先生や先輩の指示に従って、与えられた部屋へとせっせと荷物を運び入れた。
私の荷物は教科書や服、日用品など最低限の物しかないけれど、それでもかなりの量だ。主に服。
最後の荷物をぜえぜえ言いながら部屋に放り込んだところで、今日から一年間、同室になる先輩とご挨拶。冒頭に戻る。
私と同室になるのは、三年生のテマリ先輩。
後ろで四つに結った髪が特徴の、とても美人でかっこいいひとだ。
ううん、なんていうか、女の子にモテそうな感じ?
聞けば、女子バドミントン部の部長をしているらしい。
程好い筋肉に引き締まった体、どおりでスタイルが良いわけだ。羨ましい。
テマリ先輩は筋肉で太くなるから嫌だとか言うけど、全然太くない。寧ろ運動部にしては細い方なんでは?
ていうか、それは太いんではなく、ぼんきゅっぼん、ってやつだと思う。
「ナマエはちっちゃくて細くて、女の子らしいな」
「えっ、そ、そんなことは…」
「あ、でも胸は大きいな」
「!?」
「可愛らしくて、羨ましいよ」
「う…そんなことないです…」
何やら恥ずかしいが、お世辞とはいえ美人に褒められて嬉しくない訳はなく、つい照れてしまう。
にへらとにやける私に綺麗に笑むテマリ先輩が、ナマエはなんだか妹みたいだな、と呟いた。
「うちの兄弟は弟ばかりでな。ナマエみたいな妹が欲しかったなあ」
「わ、私も……私は一人っ子なので、テマリ先輩みたいなお姉ちゃんって、ずっと憧れてたんです!」
テマリ先輩のそんな嬉しい言葉に、ついそう口走ってしまう。
そしたら、テマリ先輩は、
「じゃあ、私の妹になってくれないか?」
だって!!!
もう嬉しくて嬉しくて、私は目をきらっきらさせながら、首を縦にぶんぶんと振った。
「弟は二人とも、テマリって名前で呼び捨てなんだ。だから、姉さん、とか呼んでくれると、嬉しいかな」
「ね、ねえさ…!」
えっ、なに、この幸せ!
なんなの?死ぬの?私今日死ぬの?
だってね、お姉ちゃんって小さい頃からの憧れだったんだよ!
一人っ子だし、近所の幼馴染みは男ばっかだし……お母さん世代以外に年上の女の人って周りに居なくて、本当に憧れだったんだよ!
それが、今、叶おうとしているんだよ…!!
そんな感動に悶えながらも、意を決してテマリ先輩を見上げると、ふるふると唇を動かし、息を吐いた。
「て、テマリ…姉、さん……!」
「ああ。ありがとな、ナマエ」
きらきらと輝くような笑顔でそう言われて、私はもう多分今日死ぬんだと思った。
「よし!荷物の整理が終わったら、一緒に外に飯でも食べにいくか。折角だから、アタシの奢りだ!」
「えっ!?そ、そんな…いいんですか?」
「勿論だ!遠慮しないで、姉さんに甘えとけ!」
「ね…姉さん…!」
「あ、もしかして嫌だったか?」
「いえ!とんでもないです!是非ご一緒させてください!!」
「良かった。ていうか、なんか堅苦しいな、ナマエは。もっと気楽に話していいんだぞ?」
テマリ先輩……もといテマリ姉さんは、素敵な笑顔でからりと快活に笑う。
ずっと憧れていた姉妹というものに、疑似とはいえ手が届くなんて、私にとっては夢のようだった。
「よーし、そうと決まれば、夕方までに全部片付けるぞ、ナマエ!」
「いえっさー!テマリ姉さん!」
クールビューティーお姉さま
(ああ、憧れのお姉さま……!)